転職したばかりなのに、もう辞めたい。でも40代で、入ったばかりの会社まで辞めたら、次は見つからないのではないか。そう考えると、求人を見ることさえためらってしまいます。
すぐ辞めた経歴を気にする会社はあります。それでも、それまでの経験を必要として採用した会社もあります。「今の会社を辞めたい」と思った時点で、次の道までなくなったわけではありません。
この記事の結論
入社して間もなく辞めた経験があっても、会社がいま必要とする人材で、仕事を任せられると判断されれば当然、採用の可能性はあります。そういう会社の求人にいかに当たれるか。求人を出す側の状況を探ります。
入社してすぐ辞めても、次の仕事が見つかる可能性はある
実際に、直近の数社を短い期間で辞めていた40代男性が、次の仕事を見つけた事例があります。dodaが紹介した、学生服専門店のエリアマネージャーからインテリアショップの店長へ転職した方です。[1]
この方が最初に希望していたのは、外資系の高級ブランドでした。担当者はその求人に加え、以前の経験を評価されるインテリア・雑貨の求人も紹介。本人も両方の選考を受け、仕事内容や提示された給与に納得して入社を決めています。
注目したいのは、早く辞めた経歴を理由に、安い給与で引き受けた話ではないことです。この事例では、希望していた上限の給与が提示されています。
「40代だから」「入ったばかりだから」と、自分だけで応募をやめていたら、この会社との接点は生まれませんでした。では、採用した会社は、この方の何を必要としていたのでしょうか。
どんな会社なら、これまでの経験を必要としてくれるのか
採用企業は、ブランドを強化したい時期でした。そこで評価したのが、男性のインテリア販売に加え、品ぞろえを考えるMDや、商品の買い付けの経験です。店頭で売る仕事だけでなく、売る商品を選ぶ仕事まで分かる人だったのです。
短い在籍期間があっても、採用したあとに任せたい仕事のイメージがついていた。ここが、自分の応募先を探すときにも参考になります。
同じ「店長募集」でも、接客する人が足りないのか、スタッフの教育を任せたいのか、品ぞろえを見直したいのかで、必要な経験は違います。職種名だけで判断せず、「この会社が任せたい仕事のうち、自分がやってきたことは何か」を探してみてください。

私も以前、短い職歴がいくつか並ぶ、私より年上の方を派遣スタッフとして受け入れる判断をしたことがあります。
募集していたのは比較的取り組みやすい仕事で、時給も高くありませんでした。本人から「ここで働きたい」という強い気持ちを感じ、その仕事の内容と募集条件も合わせて、この方にお願いしてみようと考えました。
これは派遣の受け入れの話で、正社員採用とは違います。それでも私は、短い職歴が並んでいるという理由だけでは断らず、今回の仕事ならどうかを見ていました。
だからといって、「給与を下げてでも必死さを見せればいい」とは思いません。dodaの事例では、経験を必要として希望上限の給与で採っています。会社によって任せたい仕事が違い、採る理由も違う。自分の経歴を一律に安く見積もる前に、その経験が必要とされる求人を探す余地があります。
辞めたい理由だけでなく、次で役立つ経験を話す
応募しようと思っても、今度は「入ったばかりなのに、なぜ辞めるのですか」と聞かれるのが怖いかもしれません。理由は事実に沿って答える。そのうえで、話をそこだけで終わらせないことが大切です。
私自身は17年勤めた会社を離れたあと、次の会社は約1年で辞めました。その後の転職活動はしていないので、再就職に成功した体験談ではありません。ただ、約1年で辞めたことで、それまでの17年の仕事までなくなるわけではありません。
長く勤めた会社があっても、次も続くとは限らない。採用する側にも、同じ点を指摘する人がいます。出演当時Webhelpの人事ディレクターだったNecole Jonesさんは、以前の会社に10年、15年勤めた人でも、新しい会社では事情が変わると話しています。定着には、会社が用意する環境や成長機会も関わる、という見方です。[2]
採る側が「また辞められたら困る」と思うのは分かります。私も部下を持っていましたし、後任に仕事を覚えてもらう負担もあります。それでも、辞めないと強く言うだけでは、どんな仕事を任せられる人なのかは伝わりません。
たとえば、新人教育を任せたい会社なら、教えた人数だけでなく、新人がどの仕事を一人でできるようになるまで担当したかを話す。商品管理を任せたい会社なら、在庫や発注のどこまで受け持っていたかを話す。大きな実績でなくても、実際にやってきたことを具体的に伝えます。
募集の背景が分からなければ、「今回採用する方には、まず何を任せたいとお考えでしょうか」と聞いてよいと思います。その答えと自分の経験を照らし合わせれば、何を伝えるとよいかも見えてきます。
募集の目的と、自分に任せられる範囲が合う会社へ応募する。経験のない仕事まで、できることにはしません。教わる必要があるなら、入社後にどこまで教わることができるかも確認します。

辞めるか迷っている段階でも、転職活動は始められる
今の会社を辞めると決めてからでなくても、求人を探し、応募することはできます。体調や生活に無理のない範囲で、在職したまま、自分の経験に合いそうな求人に応募してみてはどうでしょうか。
鈴木祐さんは、心配への対処として、いま行動できる具体的な問題に置き換える考え方を紹介しています。[4] この記事なら、「次が見つからなかったらどうしよう」を、「今週、自分の経験が重なる求人を一つ探す」に変える。先のことを全部決めなくても、今日やることは決められます。
求職活動の研究でも、いつ、どこで、どう探すかという計画の作成を促す支援を受けたグループで、応募数が増えたという結果があります。対象は南アフリカの失業中の若者ですが、行動を具体的にする考え方は参考になります。[5] 「転職活動を頑張る」で止めず、「土曜日の午前に求人を探し、経験が合う一社への応募を準備する」と、予定に入れてみます。
最初にやることは、次の3つです。
① 求人を一つ選び、「任せたい仕事」と「自分がやってきた仕事」が重なるところを書き出す。
② 重なる経験がある求人に応募し、面接では最初に任される仕事と、教わることのできる範囲を聞く。
③ 今の会社を辞めたい理由が、次の職場でも繰り返されないかを確認する。仕事内容、勤務時間、売上目標など、気になっている条件を具体的に聞く。
鈴木祐さんも『ジョブ・セラピー』の紹介で、面接で長所のアピールに偏らず、必要なスキルを学べる環境などについて質問することを取り上げています。[3] 採ってもらうためだけでなく、自分が働き続けられそうかを知る場として、面接を使ってよいと思います。
面接では、会社が任せたい仕事と、自分が引き受けられる仕事内容・勤務条件の両方をすり合わせます。たとえば、残業の多さが理由で辞めたいなら、次の会社の残業時間を聞く。未経験の業務を任されるなら、誰に教わり、いつから一人で担当するのかを聞く。入社後の働き方まで納得できる会社を選ぶためです。
一社でうまくいかなくても、それだけで「次がない」とは決まりません。任せたい仕事とのずれが分かったなら、応募先や伝える経験を見直す材料になります。
入社してすぐ辞めた経験があっても、それまで積んだ経験は残っています。この記事で紹介した会社のように、その経験を必要として採用する企業もあります。「すぐ辞めたら採ってもらえない」と応募前に決めつけず、転職活動で、相手が任せたい仕事と自分が役立てる経験を具体的に話していきましょう。
参照した資料
[1] doda「<アパレル・ファッション業界転職成功事例:店長>すぐに転職したい!豊富な経験を武器に、希望上限の年収での転職に成功」(2024年1月31日)。担当アドバイザーが紹介した事例。
[2] Eddy「Don’t Write Off Job Hoppers w/ Necole Jones」。人事担当者本人の発言。12分28秒以降の記録を参照。
[3] 鈴木祐「キャリアチェンジを成功させる質問術とストレス管理法『ジョブ・セラピー』から学ぶ面接テクニック」(2024年8月18日)。職場の実情を聞く質問の考え方を参照。
[4] 鈴木祐「定番の不安撃退テク『心配の先延ばし』の正式なお作法の話」(2021年3月16日)。心配の中から、いま行動できる問題を取り出す考え方を参照。