FIREを卒業する理由はお金だけじゃない|国内外98事例から考える退職後の暮らし

FIRE卒業の理由を国内外98事例から考えるカウジ

この記事の結論

FIRE後に働き直す理由には、お金だけでなく、人との関わりや得意なことを生かしたい気持ちもありました。退職前には、「これから何に時間を使いたいか」と「もう受け入れたくない働き方」を決めておきたいです。

今回は、国内外の公開資料から採用した98事例をもとに、退職後の暮らしを考えます。

人と話したい。得意なことを使いたい。面白そうな仕事に出会った。復帰の理由も、その後の満足も、人によって違っていました。

注目したいのは、復帰したかどうかより、どんな仕事に戻り、何が変わったのかです。

目次

公開された98事例を表で整理

2026年10月に公開資料を調べ、10月21日に集計しました。日本語・英語を中心に、本人ブログやnote、取材記事、公開掲示板の体験談を参照しています。媒体には、東洋経済オンライン、PRESIDENT Online、ESI Money、Redditなどがあります。

そのうち、退職時に働かずに暮らせると見込んだ根拠と、主な仕事を離れた後に実際に仕事を再開した記録がある98人を集計しました。

会社員への復帰だけでなく、短時間の仕事や起業も含みます。無作為調査ではないため、FIREした人全体の卒業率を示すものではありません。

FIRE後に仕事へ戻った理由

対象は98人です。同じ人が複数の理由に該当するため、合計は延べ205人です。割合は各行の人数を98人で割ったもので、合計100%にはなりません。

分類該当人数(複数該当あり)98人に対する割合
退屈・刺激・新しい挑戦43人43.9%
収入・資産・支出への対応34人34.7%
人とのつながり・孤独32人32.7%
やりがい・役割・自己肯定感40人40.8%
魅力的な仕事の機会30人30.6%
家族の事情8人8.2%
生活リズム・日々の構造7人7.1%
その他4人4.1%
理由不明7人7.1%

「追加収入」は生活費不足とは限りません。

今回の98事例では、「退屈・刺激・新しい挑戦」が43.9%、「やりがい・役割・自己肯定感」が40.8%と、それぞれ4割を超えました。「人とのつながり・孤独」は32.7%、「収入・資産・支出への対応」は34.7%で、どちらも約3人に1人です。お金以外の理由も、仕事へ戻るきっかけになっています。

主な仕事を離れてから最初の仕事再開まで

主職を離れた期間人数98人に対する割合期間を分類できた50人の内訳
1年未満24人24.5%48.0%
1年以上3年未満17人17.3%34.0%
3年以上5年未満5人5.1%10.0%
5年以上4人4.1%8.0%
不明・分類保留48人49.0%対象外
合計98人100.0%50人・100.0%

期間は主な仕事を離れてから最初に仕事を再開するまでで、投資・賃貸・副業などの収入が完全に止まった期間ではありません。「不明・分類保留」48人には、境界の概数・上限不明13人、起終点・時系列に留保がある17人、期間不明18人をまとめています。

期間を分類できた50人に限ると、48%が1年未満、82%が3年未満で仕事に戻っています。この50人の中では、3年以上たってから戻った例は18%でした。ただし、98人のうち48人は期間が不明・分類保留なので、FIREした人全体の復帰時期を示すものではありません。

FIRE開始年代と復帰までの期間

開始年代人数1年未満1年以上不明・分類保留98人に対する割合各年代内の1年未満率
20代4人0人1人3人4.1%0.0%
30代前半(30~34歳)5人0人1人4人5.1%0.0%
30代後半・前後半不明17人2人3人12人17.3%11.8%
40代23人8人8人7人23.5%34.8%
50代・50歳前後26人11人7人8人26.5%42.3%
開始年齢・時点不明23人3人6人14人23.5%13.0%
合計98人24人26人48人100.0%24.5%

開始年代の表であり、復帰年代とは異なります。「30代後半・前後半不明」には前後半を確定できない5人、「50代・50歳前後」には40代・50代を確定できない1人を含みます。「各年代内の1年未満率」は期間が不明・分類保留の人も含む各行の人数が分母です。表示割合は丸めのため合計と一致しない場合があります。日本語で発信された主集計は41人で、国籍を確認した人数ではありません。

今回の98事例では、40代と「50代・50歳前後」を合わせると49人で、全体の半数でした。「50代・50歳前後」の26人中11人(42.3%)は、1年未満で仕事を再開しています。この集計では40代の34.8%より高く、私は意外に感じました。ただし、年代が境界にある例や期間不明の例も含み、一般の50代FIRE経験者の復帰率を示す数字ではありません。

40代・50代でFIREした人は、何歳で、どんな仕事に戻ったのか

開始→復帰年齢主職を離れた期間戻った仕事理由
43歳→44歳約5か月建設機械の整備職へ再就職暇や役割不足、資金への不安
52歳→52~53歳(推定)約9か月会社員へ再就職資金面と家族の不安、必要とされた喜び
50歳→51~52歳(推定)約1年期間限定の派遣事務初回復帰の具体的理由は不明
40代後半→不明不明(2019年退職、2020年復帰)学習塾の個別指導講師社会参加、役立つ実感、追加収入
48歳→48~49歳(推定)1年未満販売店の覆面調査を受託他の人の体験を見て自分も試したかった
50代→51~53歳(推定)5か月会社員へ再就職資金不安、孤独、仕事のやり残し感
52歳→52~53歳(推定)約半年(有給消化を含む可能性)在宅中心の一般社員へ再就職役割を求め、職歴の空白の長期化も懸念
48歳→50~51歳(推定)約2年2か月週2日、行政分野の業務を受託知人の誘いと社会との接点

出典(表の上から順に):1、2、3、4、5、6、7、8。

期間は主な仕事を離れてからの長さです。投資・賃貸・ブログ等の収入が続く例もあり、全員が無収入だったわけではありません。年齢の推定は幅を残し、不明箇所は補っていません。

人とのつながりを感じながら同僚と話すカウジ

1.お金が尽きて戻った人ばかりではない

FIREを卒業したと聞くと、資産が減って生活できなくなった姿を想像しがちです。

ところが、45歳で早期退職し、約13か月後、47歳で再就職した日本のある人は、実家で農業に取り組んだものの、一人で続ける作業が合わず、再就職しています。本人は金銭目的ではないと説明し、同僚との雑談や、以前より責任の軽い立場を気に入っていました。前の仕事を辞めたことにも後悔はないと書いています。本人の再就職後の記録

この人が手放したかったのは、雇われることのすべてだったのか。それとも、以前の職場で背負っていた負担だったのか。再就職後の暮らしまで読むと、単純な「FIRE失敗」では説明しきれません。

36歳でFIREし、約6年後、42歳で会社員として復職した海外の開発者は、退職後も自分のサービスづくりに打ち込んでいましたが、支出に対する資産の取り崩し負担を理由の一つとして復職しました。同時に、自分の関心や価値観に合う仕事との出会いも挙げています。本人の復職理由、本人が明記した開始・復職年齢

家計の見直しと、やってみたい仕事との出会い。復帰の理由は、一つとは限りません。

2.自由な時間は増えたのに、何かが足りない

何も予定がないから暇なのか。誰とも話さないから退屈なのか。自分の力を使う場がないから物足りないのか。

同じ言葉でも、足りないものは違います。

先ほどの農業に取り組んだ人には、作業そのものはありました。それでも一人で続けることが苦痛になり、再就職後のやり取りを楽しんでいます。予定を埋めれば済む問題ではなかったわけです。

また、国内の別の発信者は、旅行や映画、ゲームなど、やりたいことの大半を終えて退屈したと振り返っています。退屈に加え、愛犬との別れが、FIREを辞めた最大の理由だったそうです。本人の振り返り。

私は、こうした物足りなさを次のように分けて考えたいです。

  • 刺激:考える、覚える、工夫する、上達する機会が欲しい
  • 仲間:同じことに取り組む人と話したい
  • 役割:自分の経験や得意なことを誰かに使いたい

人と話したいなら、短時間の仕事でも満たせるかもしれません。専門性を使いたいなら、管理職の責任まで引き受ける必要があるのか。欲しいものと、背負う負担を分けて考えたいです。

FIRE前の仕事では、給料や達成感を得る一方、長い拘束時間や面倒な人間関係も引き受けていました。辞めた後に仕事仲間が恋しくなっても、以前と同じ負担まで受け入れる必要はありません。

仕事の内容と無理のない予定を考えるカウジ

3.働き直して満足した人と、また辞めた人

得意な業務と、少ない勤務時間を選んだ例

40代前半でFIREし、仕事を離れてから約2年後、40代で短時間の仕事を再開した日本のある人は、退職後に休養を取り、その後、資格と経験を使えるアルバイトを始めています。以前は苦手な業務が多かったのに対し、復帰先では得意な業務が中心。月に数回の短時間勤務で、本人は掲載時点の働き方を楽しんでいると説明しています。本人の勤務条件と感想、FIREを始めた年代の記録

休養を経て、得意な業務だけを短時間で引き受ける。以前と違う条件が、仕事を楽しめる働き方につながっています。

海外には、33歳でFIREし、退職後に趣味で始めた文章を書く活動が仕事になり、フルタイムで働くようになった人もいます。本人は仕事内容を楽しみ、一緒に働く人や職場の文化が合っていると述べています。本人による復帰後の評価。

短時間かフルタイムかより、自分が望む暮らしに合うかどうかが大切です。

楽しそうでも、拘束が合わなかった例

一方、海外掲示板で50歳で退職し、18か月後、50代で仕事に戻った投稿者は、楽しめそうな仕事だと考えて以前の業界に戻りました。しかし、早朝の起床、長距離の移動、宿泊、長い労働時間が合わず、約1か月の研修を経て継続を断念しています。本人の匿名投稿

面白そうな仕事でも、続けたい生活に合うとは限りません。

復帰を考えるときは、仕事内容と給料だけで判断しないことです。始業時刻、移動、出張、急な予定変更、責任の範囲。その仕事が毎日の暮らしをどう変えるかまで含めて選ぶ必要があります。

4.退職前に、やりたいことと受け入れない働き方を決める

私は、嫌な仕事のために好きなことを諦め続ける必要はないと思っています。そのうえで、辞める前には、自分が守りたい生活を言葉にしておきたい。

「自由になりたい」だけでは、魅力的な仕事の話が来たとき、何を優先するのかが曖昧なままです。紙一枚でいいので、次の三つを具体的に書いておくことを勧めます。

① 何に時間を使いたいか

「家族を大事にする」なら、一緒に夕食を食べる時間を残す。「好きなことをする」なら、平日に制作や運動をする時間を取る。「まず休みたい」なら、予定を詰め込まずに暮らす期間を置く。

立派な目標は要りません。大切なのは、実際の予定にしたとき、どの時間を空けておきたいかです。

② 仕事の中で、何なら残したいか

人に教えること、何かを作ること、専門的な問題を解くこと。同じ仕事の中にも、好きな部分と苦手な部分があります。

残したい部分があるなら、先ほどの国内事例のように、得意な業務を中心に引き受ける形もあります。

③ もう受け入れない条件は何か

長い通勤、早朝勤務、休日の連絡、頻繁な出張、管理職の責任。辞めたい理由を「会社が嫌」だけで終わらせず、条件に直します。

たとえば「平日の夕食は家族と食べたい」なら、残業や出張の扱いを勤務開始前に確認する。「得意な業務だけで小さく働きたい」なら、担当範囲と勤務日数を曖昧にしない。給料や肩書きに惹かれたときも、最初にこの条件と照らし合わせます。

書いておけば、仕事の誘いを受けたときに、何を得て何を手放すのかを判断しやすくなります。気持ちが変わったら、書き直せばいい。

5.好きなことを守れるなら、働き直すのも自由

FIRE卒業の事例を読んで、退職を「一度決めたら変更できない約束」にする必要はないと感じました。

休んでから働きたくなることもある。好きな活動が仕事になることもある。生活費や家庭の事情が変わり、収入が必要になることもある。その変化を、退職前の考えが浅かったという話だけで片づけるのは無理があります。

働かずに好きなことを楽しめるなら、それでいい。好きな仕事で働き直したほうが暮らしがよくなるなら、それもいい。

私が避けたいのは、せっかく辞めたのに、また好きなことを諦め続ける働き方を選んでしまうことです。

退職前に決めたいのは、無職を何年続けるかより、どんな暮らしを守りたいか。働き直すときも、その順番は変えなくていいと思います。

今回の調査について

公開資料で見つかった事例を整理したもので、FIRE全体の卒業率や復帰理由の割合は推定できません。経歴などは本人の説明に基づき、現在の状況を全員に確認したものではありません。

本人が「卒業」と呼んでいない例も含みます。「刺激・仲間・役割」という整理や退職前の準備は筆者の提案です。

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カウジについて

カウジのアバター カウジ 元管理職

44歳で次の仕事を決めずに退職したカウジです。現在はストック型のスモールビジネスに挑戦中。退職前に考えたことと、辞めた後の暮らしを実体験から書いています。
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