毎日、仕事や家のことをこなしている。それなのに、ふと「このままでいいのかな」と思う。
何が不満なのかと聞かれても、うまく答えられない。「昔はもっと、やりたいことがあったはずなのに」「この生活があと10年続くとしたら、自分は納得できるだろうか」。そんなことが気になっていませんか。
私も、転職で年収を上げるという目標を果たしたのに、自分の時間をこのまま仕事に使い続けてよいのか、疑問を抱くようになりました。
ミッドライフクライシスとは
ミッドライフクライシスは、日本語で「中年の危機」と呼ばれます。人生の中ほどで、これまでの選択や今後の生き方に迷い、不安や葛藤を感じることを表す言葉です。
仕事で目指していたところに近づいたのに、達成感が続かない。子どもの手が離れ、自分の役割が変わったと感じる。体力や親の年齢が気になり、「いつかやりたい」と思っていたことを、このまま先送りしてよいのか考える。きっかけは人によって違います。
ただ、40代・50代のような、特定の年齢を迎えれば必ず起こるものとは捉えられていません。[1]また、忙しい人だけの悩みでもありません。時間ができたからこそ、「自分は何をしたいのだろう」と迷うこともあります。
仕事、家族、お金、自分自身の変化が同時に重なる
仕事では、日々の実務に加え、後輩の育成も任される。家庭では、子どもの進路を考える頃に、親の通院の付き添いも必要になる。住宅費や教育費がかさみ、自分の体力の変化も感じ始める。これまでの役割が続いたまま、新しい役割や心配事が加わることがあります。[2]
下の図は、40代・50代に複数の変化が重なる一例です。帯の位置や長さは説明用であり、統計に基づく標準的な時期・期間を示すものではありません。

職場では上司と若手の板挟み。家に帰れば、親の通院の手配も
たとえば、こんな一週間です。
職場で若手から「飲み会は残業に含まれますか」と聞かれる。一方、上司からは「若手を飲み会に連れてこれないのはお前の問題だ」と言われる。若手に参加を強いるのも違うと思いながら、上司には不参加の理由を説明する。日々の仕事でも、後輩に作業を教えながら、自分の仕事も進めなければなりません。
家に帰ると、親の通院に誰が付き添うか、家族に連絡する。週末には買い物や片づけがある。そこへ住宅費や学費の支払いが重なると、働く時間を減らしたくても、収入が気になります。
一つずつなら対応できても、同じ週に集まれば、休む時間も、自分のことを考える時間も残りません。人に頼むにも、誰に何を頼むかを考え、説明する手間がかかります。
これは、負担が重なる様子を説明するための例です。全員に同じ出来事が起こるわけではありません。
そして、忙しさが落ち着いても、「この毎日を、あと10年続けたいだろうか」という疑問が残ることがあります。私の場合は、年収を上げるという目標を果たした後も、その疑問が消えませんでした。

転職で年収が上がっても、私は納得できなかった
ある社員に仕事を説明すると、「理解できました。ありがとうございます」と言われる。それでも、「これって先月も同じことを話していないか?」と思うことが何度もありました。同じ説明を繰り返しながら、私は自分の人生の時間を何に使っているのだろう、と考えました。

転職によって、掲げていた「年収を上げる」という目的は果たせました。新しい環境で経験も得ました。それでも、私には意味を感じられない調整や、同じ説明の繰り返し、後始末に時間を使うことに、強い疑問を抱くようになりました。
自分の時間と労力を使って収入を得る。それが仕事だと、以前のようには割り切れなくなってきたのだと思います。
そこで私は、44歳で退職を選びました。20代の頃に追い求めていた「自由にのんびり生きたい」「ビジネスオーナーとして生きたい」という働き方に、振り切ることにしました。
現在は、ストック型のスモールビジネスに絞って挑戦しています。自分で作った記事や商品が、後からも収益につながる形を目指しています。20年越しの再挑戦で、まだその途中です。
これは私が選んだ道です。退職すれば誰もが納得できる暮らしになる、という話ではありません。これまでの経緯と、いま目指していることはプロフィールにまとめています。
「このままでいいのか」と思ったら、何から始めればよいか
私は、次の順番で考えることを提案します。
用事を減らす
予定が詰まっているなら、延期できる用事や人に頼める用事を探す
書き出す
今の生活の何が嫌なのか、本当は何をしたいのかを書く
相談して試す
書いたメモをもとに相談し、次に試すことを決める
1.考える暇もないなら、用事を減らせないか相談する
仕事と家の用事で一日が終わるなら、予定を見ながら「後回しにできるもの」「誰かに頼めるもの」を検討してみてください。
たとえば、急がない片づけは来週に回す。子どもが無理なく買い物をできる年齢なら、近所で買えるものをお願いする。職場で締め切りが重なっているなら、上司に「全部は間に合わないので、どれを優先するか決めたい」と相談する。
親の通院に付き添う、食事を作る、掃除をするなど、なくせない用事もあります。家族も手いっぱいなら、次のようなサービスや窓口を使う方法があります。CaSyとnoshは、公式情報を調べた紹介です。私の利用体験ではありません。
- 掃除や料理を頼みたい:CaSy(カジー)。有料の家事代行です。頼みたい作業が対象か、住んでいる地域で使えるか、交通費を含めていくらかかるかを確認できます。広告(アフィリエイトリンク): 【CaSy】

- 毎日の食事作りを減らしたい:nosh(ナッシュ)。冷凍弁当の宅配サービスです。定期配送なので、送料を含む費用や冷凍庫の空きに加えて、スキップ・停止の手続きも確認してから選んでください。nosh公式サイト/定期配送の停止・解約について
- 親の生活や介護を家族だけで支えるのが難しい:地域包括支援センター。親が住む地域の窓口で、困っていることや利用できる支援を相談できます。市区町村の高齢者福祉窓口に聞くと、担当のセンターを案内してもらえます。厚生労働省の家族介護者向け案内
お金をかけてまで頼むかどうかは、家計と、どの用事を減らしたいか次第です。空いた時間は、すぐ別の用事で埋めず、休んだり自分のこれからを考えたりするために使ってみてください。
2.今の生活で嫌なことと、本当はしたいことを書き出す
頭の中だけで考えていると、仕事への不満も、家族への気がかりも、将来への不安も一緒になり、「全部が嫌だ」で止まってしまうことがあります。
そこで、何が起きて、どう感じたのかを紙やスマホのメモに書いてみてください。読み返しながら、本当はどうしたかったのか、次に何ができるのかを考えます。

たとえば、次のような内容です。
- 最近つらかったこと: 休日にも仕事の連絡が来た。休めず、うんざりした
- 本当はどうしたかったか: 休日は仕事から離れて、家族と出かけたかった
- 次にできること: 休日に対応が必要な連絡と、平日まで待てる連絡を上司と決めたい
これは書き方の例です。「仕事が嫌だ」と思っていても、書いてみると「休日まで仕事が続くのが嫌だ」と気づくかもしれません。すぐに答えが出なくても、書いたものは、その後に誰かへ相談するときのメモになります。
私の場合は、「もっと収入を増やしたい」の先に、20代の頃から考えていた「自由にのんびり生きたい」という希望がありました。いま困っていることだけでなく、昔やりたかったことを思い出してみるのも、考えるきっかけになりました。
何も思いつかなければ、次の四つから気になる質問を選んでみてください。
- 人間関係:誰との、どんなやり取りで疲れるか
- 望む暮らし:後回しにしている「やってみたいこと」はあるか
- 仕事とお金:仕事の何を変えたいか。収入が減ると何の支払いに困るか
- 健康:疲れたときに休めているか。何が休む時間を奪っているか
この四つの質問は、Anju Debnath氏の「R.I.C.H. Quadrant™」を参考に、この記事向けに作ったものです。[3]
3.悩みに合う相手に相談し、次に試すことを決める
書いてみても考えがまとまらない、身近な人には話しにくい。そんなときは、悩みの内容に合わせて相談先を選ぶ方法があります。
- 仕事の悩みや、うまく説明できない気持ちを話したい:Kimochi(有料)。私が仕事の悩みを話した経験を、別の記事にまとめています。利用を考えている方は、感想と料金・最低登録期間などを参考にしてください。仕事の悩みをKimochiで話した体験
- これからの働き方や、自分の経験をどう生かすか相談したい:マイジョブ・カードで案内している無料のキャリアコンサルティング。仕事をしている人も、仕事を探している人も、ジョブ・カードを使って相談できます。無料キャリア相談の内容・申込先を見る
- 働き方を変えた後の家計や、今後必要なお金が気になる:J-FLEC「はじめてのマネープラン」。家計管理や生活設計を相談できます。対面・オンラインの無料相談は1人1回、最大1時間。金融商品の勧誘はなく、個別の商品を勧める相談でもありません。無料のお金の相談の内容・申込先を見る
相談するときは、先ほどのメモを見せて「ここで迷っています」と伝えると、話を始めやすくなります。答えをきれいにまとめてから申し込む必要はありません。
話した後は、「何が分かったか」「次に何をするか」をメモに足します。たとえば、気になる仕事をしている人に話を聞く、自分でものを作りたいなら休日に作品を一つ作る。実際にやってみて、また続けたいか、時間や費用に無理がないかを確かめます。[4]
相談先が合わなければ、ほかの窓口を選んでも構いません。相談したからといって、勧められた方法をその場で決める必要もありません。
試したことの結果がすぐに出ず、続けるか迷っている方へ。長い目で仕事や生き方を考える本として、『ロングゲーム』を紹介しています。
家族が悩んでいたら、「何があった?」と聞く
身近な人が「このままでいいのかな」と話したとき、すぐに「仕事を辞めたら?」「趣味を作れば?」と答えを出さなくてもよいと思います。
「最近、何があった?」「どんなときにそう思う?」と聞いて、まず本人の話を聞いてみてください。「今日は話を聞いてほしい? 何か手伝ってほしい?」と尋ねる方法もあります。
忙しくて考える時間がないようなら、「土曜日の買い物は私が行こうか」など、自分が代われる用事を提案する。空いた時間をどう使うかは、本人に任せます。
ただ、支える家族にも仕事や用事があります。全部を引き受ける必要はありません。「買い物はできるけれど、平日の通院は難しい」のように、自分ができる範囲を伝えてください。傷つく言葉を受け止め続ける必要もありません。
眠れない、食べられないなど、生活に支障が出ているときは、年齢のせいと片づけず、医療機関や相談窓口を頼ってください。[5]
考え続けるのに疲れたら、映画や本でひと息
自分のことを考えてばかりだと、疲れる日もあると思います。少し離れて、物語を楽しむ時間があってもよいのではないでしょうか。
- 『Shall we ダンス?』:仕事も家庭もある会社員が、ダンス教室に通い始める物語。慣れないことに戸惑う姿も含めて楽しめる一本です
- 『LIFE!/ライフ』:写真のネガを探して旅に出る主人公を、壮大な風景とともに楽しむ作品です
- 『中年危機』河合隼雄:日本文学の登場人物を通して、中年の迷いを考える一冊です
- 『ミドル・エイジ・ビギンズ』東畑開人:4人へのインタビューから、中年の戸惑いや、これからの生き方に触れる一冊です
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「この先も同じ毎日を送りたいか」を、自分に聞いてみる
私は退職を選び、20代の頃に望んだ働き方に挑戦しています。
考える時間もないなら、まず延期できる用事や人に頼める用事を探す。今の生活で嫌なことと、本当はしたいことを書き出す。そのメモをもとに誰かへ相談し、気になる仕事や活動を試してみる。今の自分にできそうなところから始めてみてください。
参考資料
[1]Elaine Wethington(2000)Expecting Stress: Americans and the “Midlife Crisis”. Motivation and Emotion, 24, 85–103.
https://midus.wisc.edu/findings/pdfs/103.pdf
[2]Frank J. Infurna, Denis Gerstorf, Margie E. Lachman(2020)Midlife in the 2020s: Opportunities and Challenges. American Psychologist, 75, 470–485.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32378943/
[3]Anju Debnath / Midlife Reinvention. The R.I.C.H. Quadrant™: A Mirror for Midlife Reinvention.
[4]Herminia Ibarra / London Business School(2024)Transforming your midlife career: Top tips for success.
https://www.london.edu/think/transforming-your-midlife-career-top-tips-for-success
[5]厚生労働省 こころの耳「ストレスへの気づき」「ご家族にできること」「相談窓口案内」
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh003/
https://kokoro.mhlw.go.jp/families/
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
情報の確認日:2026年10月5日
