生活のために始めた今の仕事。続けてはいるけれど、特に好きだとは言えない。このままでいいのかな、と思うことはありませんか。
最初から好きだった仕事でなくても、働くうちに面白さが見つかることはあります。今の仕事のどこなら続けたいと思えるか。そこから考えてみたいと思います。
この記事の結論
生活のために始めた仕事でも、できることが増え、自分の工夫が人の役に立つうちに、好きな部分やこだわりが育つことがあります。最初から好きだったかどうかだけで、その仕事を続けたいと思えるかが決まるわけではありません。
できることが増えると、仕事の見え方が変わる
私はゲーム制作の専門学校を中退し、職を転々としたあと、仕事を評価してもらった会社で正社員になりました。そこで17年働き、管理職も経験しています。
初めてリーダーになったときには、長く業務を担っていた人が辞め、ノウハウがほとんど残っていませんでした。残されたデータから業務を読み解きながら、新しく入ったメンバーにExcelなどの実務を教えることになりました。
仕事を理解し、人に教えられるようになったのは、そこで働いたから得た経験です。
仕事を覚えるまでは、手順を追うだけで精いっぱいです。分かることが増えると、「この数字は何を判断するために必要なのか」「ここで説明が足りないと、次の人が迷う」といったことが見えてきます。
同じ資料を作っていても、言われた形に仕上げるだけのときと、受け取る人が使いやすいように直せるときでは、自分が関われる範囲が違います。仕事の名前は変わらなくても、中身は変わっていきます。
接客や現場の仕事でも、「前より楽にできたこと」「人に喜ばれたこと」はないでしょうか。大きな成果でなくても、日々の仕事の中に思い当たる場面があるか、振り返ってみてください。
工夫が役に立つと、自分の基準ができる
物流費が業量に対して上がっていたとき、数字を取りまとめて、その要因を調べたことがあります。
何が原因なのかを数字で説明し、相手に納得してもらえたとき、「これ、面白いかも」と思いました。
また、複数の部門にまたがる関係者に、共通認識を持ってもらうための概要資料を作ったこともあります。いろいろな立場の人がいるなかで、資料を通じて意思疎通が一度でできたときも、面白いと感じました。
Excelやマクロを使った自動化も、仕事のなかで面白さを感じたことの一つです。
引き継ぎのたびに同じ質問が返ってくるなら、聞かれる項目を先に書く。説明で相手が止まる場所が分かれば、その順番を変えてみる。
そのあと、相手が迷わず進めるようになったかを見る。質問が減ったなら、自分の工夫が役に立ったと分かります。次からは「ここまで書いて渡そう」という、自分なりの基準ができます。
それを重ねるうちに、説明や資料づくりを任されるようになることもあります。周りの人が困ったときに頼られる。自分の工夫で相手が困らなくなったという手応えも得られます。
鈴木祐さんが紹介した情熱についての研究も、この順番を考える手がかりになります。起業を扱った研究ですが、努力のあとに情熱が高まる過程には、前進の実感や、自分で選んで取り組めることが関わっていました。原研究
働く中で「前よりできる」「自分が変えられる」「人の役に立てる」が増えているか。続けるうちに、そんな手応えがあるかを見てみる。時間をかければ勝手に好きになる、という話ではありません。
好きな部分は、今の仕事の中にも見つかる
今の仕事を丸ごと好きになれなくても、任された作業の中には、もう一度やりたいことがあるかもしれません。偶然任された仕事が入口になることもあります。
鈴木祐さんも、少しずついろいろなことに関わりながら天職を見つけていく考え方を紹介しています。出会いは偶然でも、何が自分に合うかは、やってみないと分からないところがあります。
希望する職業とは別の仕事をしている人たちに聞いた研究に、雑誌編集の仕事に惹かれていた広報担当者の話が出てきます。その人は、同僚から文章や伝え方について相談されるようになり、言葉選びを学びながら、その役割に楽しさを感じていました。
望んだ肩書きとは違っても、やりたかったことの一部が、今の仕事に含まれていたわけです。
「この会社が天職か」と丸ごと考える前に、もう一度任されたい仕事を見てみる。説明する仕事なのか、数字を扱う仕事なのか、人に教える仕事なのか。小さく分けると、好きな部分が見つかるかもしれません。
その仕事を増やすなら、代わりに何を減らすかも含めて、担当と時間を相談する。好きな仕事を増やすために、仕事の総量まで増やす必要はありません。
始めた理由と、続けたい理由は同じでなくていい
スティーブン・R・コヴィーの『第8の習慣』第3章(The Solution)には、30年以上勤務し、退職できる立場にいた大佐の話が出てきます。父の最期の言葉をきっかけに、自分が去ったあとも役立つ組織を残したいと考え、退職せず改革に取り組むことを選びました。(出典:原著第3章の抜粋「The Soul’s Search for Meaning」)
これは、嫌いだった仕事を好きになったという例ではありません。ただ、長く働いたあとにも、そこで何をしたいのかを考え直し、続ける理由が変わることを示しています。今の仕事でも、始めたときの理由に加えて、これからそこで何をしたいかを考えてよいと思います。
好きになるために、無理をして続ける必要はない
私は17年勤めた会社を離れ、その後に転職した会社も辞めています。経験が身についたことと、この先もそこで働きたいかは、別の話でした。
自分の工夫を試せる。前よりできることが増える。任された仕事に自分も納得している。そうした変化があるなら、最初は好きでなくても、続ける理由になります。
反対に、工夫しようとしても変える余地がない。仕事を覚えた分だけ、処理件数と責任ばかり増える。頼られてはいるけれど、自分がやりたい仕事には時間を使えない。それなら、足りないのは情熱ではなく、任され方や働く条件かもしれません。
会社が任せたい仕事と、自分が続けたい仕事が一致するとは限りません。役割を引き受ける前に、何に時間を使うことになるのかまで見ておきたいところです。
仕事内容は好きでも、その職場では続けにくいこともあります。担当や部署を変える、同じ技術を別の会社で使う。今の職場を離れることは、そこで身につけたものまで捨てることではありません。
生活を支える仕事として続け、好きなことは仕事の外に持つ。その選び方でもいいと思います。

最初は好きではなかった仕事でも、上達や工夫、人の役に立てた実感を通じて、好きな部分が生まれることがあります。仕事の全部を好きになる必要も、好きになるために無理をして続ける必要もありません。
まずは、今の仕事で「もう一度やってもいい」と思うことを、一つ書いてみませんか。思い浮かばなければ、無理に好きなところを探さなくても大丈夫です。
一つ見つかったら、その仕事を続けるために、担当や時間をどう変えられそうかも考えてみる。相談できる相手がいれば、代わりに減らしたい仕事と一緒に話してみる。今の職場で変えられそうにないなら、担当や職場を変えることも含め、続けたい部分と変えたい条件を分けて考える材料にしてもらえたらと思います。