この記事の結論
会社を辞めたい。でも働き方に関する要望が通れば、今の会社で続けてもいい。そんな条件があるなら、一度会社へ伝えてみることもアリ。
私は勤務条件を変える交渉はしませんでしたが、周りには希望を伝え、実際に働き方が変わった人が数名いました。
え、それで通るの? 同僚が変えた働き方

金曜日の出社をリモート勤務に変えた元同僚
元同僚に、家庭の事情から会社と交渉し、金曜日の出社をリモート勤務へ変えた方がいました。この方は、退職を持ち出して交渉したわけではありません。
入社前にリモート中心の条件を伝えた人
別の方は、エージェントの紹介で入社したと聞きました。「リモートOKなら入社する」という条件を出し、その条件で採用されたようです。
いずれもIT関連の担当で、リモートでも仕事ができる業務でした。お二人とも実務経験があり、それなりに結果を残し、立場のある方たちでもありました。こうした背景もあるので、同じ希望が誰にでも通るとは言えません。
それでも、私は「意外と要望は通るんだな」と感じました。辞めることを考えているときにも、続けてもいいと思える条件があるなら、相談する余地はあるのかもしれません。
辞めたいけど「ここが変われば続けてもいい」があるかどうか

最近「もう辞めたい」と思ったのは、どんな場面でしょうか。そのとき、何が変わればよかったのかを考えてみてください。
たとえば、次のような条件です。
- 週2日は在宅で働ければ、通勤の負担が減って続けられそう
- 担当する仕事と優先順位が決まれば、今の仕事を続けてもいい
- 勤務時間を変えられれば、家の用事と両立できそう
仕事内容や同僚、給与など、今の会社で残しておきたいものも一緒に考えます。条件が変わっても辞めたいなら、ほかにも理由がありそうです。
続けてもいい条件があるなら、譲れないことと、別の方法でもよいことを分けておきます。たとえば、在宅勤務が難しくても、出社時間を変えることで困りごとが解消するかもしれません。譲れない条件が決まっていれば、希望が通らなかったときに、別の仕事を探すかどうかも判断しやすくなります。
続けてもいい条件を、会社に伝えてみる
相談前に、増えた仕事や所要時間をメモしておくと話しやすくなります。上司には、実際に起きていること、仕事や生活への影響、希望する変更を伝えます。相手の性格や意図を決めつけず、どの仕事で何に困っているかを話します。[4]
職場で上司への不満の伝え方を調べた2005年の研究では、従業員が5通りの伝え方を評価しました。解決案を示す方法が最も高く評価され、退職を持ち出して迫る方法は最も低い評価でした。実際の交渉成功率を調べた研究ではありませんが、まず変えてほしいことと改善案を伝える際の参考になります。[7]
条件が変わらなければ退職も考えている場合は、その事実を補足して伝えることもできます。ただ、辞めるつもりがないのに、希望を通すために退職を持ち出すのは避けたいところです。

担当変更が難しければ、安全や品質に必要な作業は守りながら、資料の頻度や期限を見直せないか相談する方法もあります。
リモート勤務なら、在宅でできる仕事と出社が必要な仕事を分け、連絡方法も伝えます。担当や期限は上司、勤務制度は人事などへ相談し、給与や手当への影響も確認してください。
体調を崩している場合や、威圧・ハラスメントで相談が難しい場合は、休養や別の上司・人事、社外の窓口への相談を優先してください。相談先は厚生労働省の「こころの耳」と「総合労働相談コーナー」で確認できます。[5]
相談のあとも、続けられるかを考える
変更が決まったら、内容と開始時期を確認します。その後、残業や通勤、担当業務の負担が実際に減ったかを見ます。検討中なら、返事をもらえる時期を聞いておきます。

エン・ジャパンが2014年に公表した調査には、引き留めで給与は上がったものの、約束された新しいプロジェクトが途中でなくなり、再び転職活動を始めたという匿名回答がありました。[6]
希望が通らないときには、人員や制度、会社の判断など、伝え方だけでは変わらない事情もあります。相談前に考えた条件をもとに、別の方法を相談するか、転職先を探し始めるかを考えます。
転職するなら、入社前の条件として伝える
次の会社を選ぶ場合は、エージェントに出社できる頻度や必ず必要な条件を先に伝えます。入社前に確認したいことは、転職先の出社頻度・通勤条件の確認にまとめています。
次の仕事を決めずに辞めることを考えている方は、生活費・体調・家族・退職後の見通しを整理した記事も参考にしてみてください。
私は、「この条件なら続けてもいい」と思えるものがあるなら、辞める前に一度会社へ伝えてみてもいいと思います。
補足|要望を伝えた人の調査と、働き続けた事例
希望の実現と、会社の対応を聞いた調査
リクルートワークス研究所の2021年「働く人のボイス調査」では、仕事で最も重視する条件について、今の会社に不満や要望、改善案などを伝えた2,111人のうち、59.5%が希望の全部または一部がかなったと答えています。内訳は、全部が9.8%、一部が49.7%でした。[1]
同じ2,111人に会社の対応を聞いた別の設問では、40.7%が、話は聞かれたものの具体的な対応はなかったと回答しています。希望がかなったかを聞いた設問とは別なので、二つの割合を成功・失敗の内訳として足すことはできません。
調査全体は、18〜54歳の民間企業等で週8時間以上働く4,901人が対象です。一都三県と札幌・福岡・仙台・広島・浜松で、2021年3月に実施されたインターネット調査でした。退職前の条件交渉だけを調べた数字ではありません。
担当や勤務時間を変えて、働き続けた公開事例
沖縄労働局の平成24年度委託事業の事例集では、國吉商店で、苦情対応や先輩社員の退職による重圧を抱え、辞めたいと申し出た女性の例が紹介されています。会社が配置を変え、負担軽減と短時間勤務に対応し、事例集作成時点では勤務を続けていました。[2]
札幌市が2017年に公表した事例集には、家庭との両立に悩み、退職を考えて職場へ相談した本間社会保険労務士事務所の職員の例があります。その後、育児休業を経て在宅勤務で復帰し、取材時には事務所で短時間勤務をしていました。[3]
参考資料
[1] リクルートワークス研究所「働く人のボイス調査」2021年。調査概要は印刷p2、要望を伝えた経験はQ33・印刷p130、会社の対応はQ35・印刷p132、希望の実現はQ36・印刷p133。
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[2] 沖縄労働局 平成24年度委託事業「メンター制度 好事例集」。株式会社 國吉商店、印刷p8。
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[3] 札幌市「札幌市内の企業におけるテレワークの導入事例」2017年3月。事例10、本間社会保険労務士事務所、印刷p14。
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[4] Centre for Clinical Interventions, Assert Yourself!, Module 4「How to Behave More Assertively」、pp5–6。伝え方の考え方を参照。
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[5] 厚生労働省「こころの耳」相談窓口案内、および「総合労働相談コーナーのご案内」。
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[6] エン・ジャパン「転職時のカウンターオファーについて」2014年11月18日公表。
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[7] Kassing, J.(2005)“Speaking up competently: A comparison of perceived competence in upward dissent strategies.” Communication Research Reports, 22(3), 227–234。従業員による伝え方の評価を扱った研究。
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